santosのカメラ・機材日記

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SONY α7RⅢ で動画+写真 の仕事をこなすコツ vol.31 〜 今更聞けない PP ピクチャープロファイル  基本その2〜

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皆さま、こんにちは。Santos です。

 

第2回 「今更聞けない PP ピクチャープロファイル」ということで、α7RⅢでの運用を考えた時に、色調整をピクチャープロファイルで行うのと、ポストプロで行う時の根本的な違いや注意点にてついて理解を深めたいと思います。

 

文字ばっかりですみません!!が、解説はそうなってしまいまっす!!!

 

ピクチャープロファイルでは、収録時の映像の色、鮮明さなどを調整することができます。そして、DaVInciなどのグレーディングソフトや、EDIUS、PremierePro などのノンリニアソフトでも撮影後の編集時に色調整の作業ができます。では、ソフトで行う場合と、ピクチャープロファイルで行う場合の違いを考えてみましょう。

 

コーデック、という言葉は皆さまご存知かと思います。各種カメラにはそれぞれに、各カメラ特有のコーデックを内蔵しています。

生の映像信号を生のまま収録するとすると、それはそれは膨大な情報量になってしまいます。よって、限られたメモリー媒体に記録するために、通常は映像信号を各種コーデックで圧縮して記録します。

 

生のまま収録するならば、RAWがあったり、非圧縮RGBフォーマットなどもありますが、限られた特定の環境やカメラでしかその収録方法は取れないのが現状です。

 

圧縮処理を行う以上、映像は少なからず劣化します。劣化を伴う圧縮のことを「不可逆圧縮」と呼びますが、撮影済みの圧縮映像素材に対して色補正などのエフェクトを行うということは、少なくとも多少でも劣化した映像に対して加工処理を施すということになります。

 

たとえば、圧縮によって階調が不足した部分や圧縮によるブロックノイズがあるとすると、その部分も含めて処理がなされ、より目立ってしまうこともあります。

 

α7RⅢの場合、例えば内部RECでの4K30P収録では、XAVC Sコーデックでの 8bit収録ということになり、各信号の階調は8bit(つまり2の8乗にて256階調)であり、正確には、4:2:0 8bit という高圧縮の収録になりまして、、、後からの色調整には実はあまり向かないコーデックだ、とも言えます。。

 

例えば、ProRes 422 10bit などの10bit階調での収録が可能なコーデックであれば10bit(1024階調)という8bitに比べると非常に豊富な階調ステップを持っており、4:2:2 と 4:2:0 の圧縮の違いもあり、編集時での色調整耐性がXAVC Sに比べると高いという特性があります。

 

この事を考えると、「α7RⅢで内部RECするのであれば、できる限り収録時に最終絵に近い色味で収録をしておきたい」ということになってきます。


ピクチャープロファイルはセンサーからの信号に対しての直下での信号処理となるため、圧縮前の信号を処理しています。よって、高階調な映像信号に対してガンマカーブの変更や色補正を行うことになります。被写体の質感を保ったまま、精度の高い映像調整が行える、ということに他なりません。

 

例えば、後処理で撮影時に黒つぶれしてしまった部分や白飛びしてしまった部分を調整しようとしても色が戻ってこない、という事があります。それは、収録時にすでに階調が失われているため(0x8=0 , 0x10000=0 !! 信号0に対して何をかけても0のまま)です。また、たとえ色が戻ってきたとしても、階調に段差ができてしまう(バンディングと呼びます)、という現象もよく起こります。

 

よって、8bit階調収録においては、ピクチャープロファイルを使って、明部、暗部に階調が残るように調整しつつ、カメラの持つ素の状態のダイナミックレンジをうまく使って、ガンマカーブも適切にあてて撮影してしまうほうが最終的な上りは良くなる傾向があると個人的に感じています。

 

グレーディングを最小限にし、撮影時になるべく意図とするイメージに近い映像を作るには、このピクチャープロファイルを使いこなすのが実は適している、と考えられます。

 

では、グレーディングが前提の「LOG収録」はどうなのか?ということなのですが、α7RⅢでの内部RECでは当然ながら8bit収録なわけでして、、、LOG収録をわざわざ行うメリットはさほどない、というのが個人的な見解であります。

 

あるとすれば「例えば真白な室内でウェディングドレス姿を収録する」といった、被写体が全体的にハイキーやローキーなど狭い輝度差な被写体に対して、カメラセッティングを後処理前提で階調を多めになるようにセッティングにしてしまって、ポスト処理であとで戻して階調を確保する、ということは考えられます。

 

つまり、「α7RⅢにはLOG収録機能があるにはあるが、基本的にはカメラ本体で色を作って的確に収録してそのまま編集する」というコンサバな思想で使うほうが何かと幸せかも、と言えるかもしれません。

 

よって「ピクチャープロファイルを使いこなせば、α7RⅢでそこそこ幸せな撮影ができますよ」とも言い換えれるかと思います。

 

ちなみに、α系を骨までしゃぶって、より高品質な仕上がりを目指したい!!ということになりますと、外部レコーダーを使って外部RECする、という方向におのずとなってくる、という事も容易に想像できてしまいますね。

 

α7RⅢのHDMI出力は4:2:2 8bit なので内部RECの 4:2:0 よりは幾分かマシ、ということになります(これが10bit出力になったらいいのになあ〜、とよく言われるところで、PanasonicのGHシリーズに注目がいく理由でもありまして。。。)

 

ということで、いかがでしたでしょうか。。文字ばっかりで、本当すみません。。。もうしばらくこんなのが続いちゃいますが、、、次回 第3回は「ガンマカーブって何すか?」ということで、ガンマカーブについて考えます。

 

それではまた!!

 

 

 

●以下、補足説明

4:2:2 や 4:2:0 というのは何か?ということなのですが、ちょっと補足します。

YUV という言葉は聞いた事ありますでしょうか?

Yが輝度(明るさ)、UVが色差(色合い)を表してまして、Uは赤と輝度の差、Vは青と輝度の差です。つまり、いずれも色差をあらわしています。

 

人間の目の視覚特性が根本になっているのですが、最も敏感に感じ取る一番感度が高いのが輝度です。それに対して、U,Vの色変化にはやや鈍感だという特性があります。この視覚特性を利用してYUVが4:4:4 つまり 4(Y):4(U):4(V)の情報量があるとして、輝度Yを4のままにして、UVの鈍感な色差情報量を減らして 4:2:2 や 4:2:0 と表現しています。

 

具体的には、水平方向のUV情報を半分にしたのが 4:2:2 であり、さらに水平・垂直方向の両方のUV情報を半分にしたものが 4:2:0 となります。こうする事で情報量を圧縮でき、非可逆的な圧縮が行なわれていることになります。

 

 

2018/3/25 追記

α7RⅢをベースに書いてますが、この内容、3/20に発売されたベーシックモデルの α7Ⅲ でも参考になるかと思います。