SONY α7RⅢ で動画+写真 の仕事をこなすコツ vol.32 〜 今更聞けない PP ピクチャープロファイル 基本その3〜
皆さま、こんにちは。Santos です。
「今更聞けない PP ピクチャープロファイル 」第3回は、ガンマカーブについてい考えたいと思います。今回は、SONY公式資料を咀嚼して理解を進めていきますので、何やら図が出てきますw 文字ばっかりよりはマシかなとw
さて、ガンマカーブ、このようなグラフを見たことがあるかと思います。
こちらはSONYの技術資料より転載いたしました。
ガンマカーブとは、入力信号レベル(上記グラフでいうところのX軸、横軸)と、出力信号レベル(Y軸、縦軸です)の関係を表したものです。その特性を定めた数々のガンマカーブが提供されている、ということですね。
入力信号とは被写体や元の映像がもつ光の量で、出力信号とはカメラが出力する映像の信号量と言えます。
これを聞いて?????となる方、多いのではないでしょうか。
このような面倒臭いことをなぜしなければならないのか、ということです。ストレートに直線でいいじゃねーか!!と。
ですが、世の中、そう単純ではないのですよね。日本の映像文化の土台になっているのはテレビ放送であり、この歴史的背景が強く影響しているわけです。
上のグラフの中に「CRT Gamma 2.2」という表記があります。これは何かというと、ブラウン菅の表示特性を示しているんです!!
今や液晶や有機ELが当たり前な世の中なのですが、テレビ放送の基準というのは「ブラウン管」の時代に策定されたものであります。よって、映像の世界ではその名残が今でもあり、市販されている液晶テレビなどは「ブラウン管の表示特性を擬似的にシミュレーションする回路」を持っており、基本的にブラウン管と同じ表示特性になっているのです。
まず「映像信号として数値的に忠実に映像再現」する場合、入力信号に対して出力信号が直線的に比例していればよいわけです。
モニターは入力信号に対する出力信号が上の図のような「CRT Gamma 2.2」のような曲線になっています。これがモニターのガンマカーブです。
一方でカメラが持つビデオガンマカーブは、この曲線の逆の特性を持った形になっています。これにより、カメラとモニターの特性が相殺され、元の被写体の像を再現して表示することができます。
これがガンマカーブの正体です。
ここで「数値に忠実に」表現するだけならば上記のビデオガンマでいいわけですが、このカーブ特性を微調整してやると、入力と出力に強弱がつき、表示特性というものをもたせることができるわけです。
α7RⅢに搭載されているガンマカーブを含め、現状でSONYから提供されているガンマカーブの一覧を見てみたいと思います。SONY 公式での解説を見てみましょう。
Movie |
動画用の標準ガンマカーブ。 |
Still |
静止画用の標準ガンマカーブ。 |
Cine1 |
暗部のコントラストをなだらかにし、かつ明部の階調変化をはっきりさせて、落ち着いた調子の映像にする(HG4609G33相当)。 |
具体的には、反射率18%のグレー(標準基準グレー)をビデオ出力33%になるように露出を合わせた場合に、460%のダイナミックレンジが得られるガンマカーブ。最大ビデオ出力は109%。 |
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グレーディングなしでも使用可能だが、なめらかな階調特性を持っているため、撮影後のグレーディングで画作りを完成させることもできる。 |
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Cine2 |
[Cine1]とほぼ同様の効果が得られるが、編集などでビデオ信号100%以内で扱いたいときに選択(HG4600G30相当)。反射率18%のグレーをビデオ出力30%になるように露出を合わせた場合に、460%のダイナミックレンジが得られるガンマカーブ。最大ビデオ出力は100%となる。 |
Cine3 |
[Cine1] より明部と暗部のコントラストを強め、さらに黒側の階調変化をはっきりさせる。 |
Cine4 |
[Cine3]よりさらに暗部のコントラストを強める。 |
ITU709 |
ITU709相当のガンマカーブ(低輝度部ゲイン4.5)。 |
ITU709 (800%) |
[S-Log2]または[S-Log3]撮影前提のシーン確認用ガンマカーブ。 |
S-Log2 |
S-Log2のガンマカーブ。撮影後のグレーディングを前提とした設定。 |
S-Log3 |
S-Log3のガンマカーブ。撮影後のグレーディングを前提とした、よりフィルムに似た特性のガンマカーブ。 |
HLG ※ |
HDR撮影用のガンマカーブ。 HDRの規格であるITU-R BT.2100のHybrid Log-Gamma相当の特性。 |
HLG1 ※ |
HDR撮影用のガンマカーブ。 [HLG2]よりもノイズを抑えたい場合の設定。ただし、撮影できるダイナミックレンジは狭くなる。ビデオ出力レベルは最大87%になる。 |
HLG2 ※ |
HDR撮影用のガンマカーブ。 ダイナミックレンジとノイズのバランスを考慮した設定。 ビデオ出力レベルは最大95%になる。 |
HLG3 ※ |
HDR撮影用のガンマカーブ。 [HLG2]よりも広いダイナミックレンジで撮影したい場合の設定。ただし、ノイズレベルはあがる。ダイナミックレンジはHLGと同じ。ビデオ出力レベルは最大100%になる。 |
さあさあ、なんのこっちゃ!!!ですよね〜。。。
このブログでは映像を取り扱っているので、最も基本となる「 Cine1 」のところから見ていきましょう。
(ちなみに、「Movie」「Still」というのは「SONYが提案するカメラとしての基本特性の設定」と考えてよいかと思います)
「Cine1 」の解説に「HG4609G33相当」とあります。これは、ズバリ、このカメラがその基礎となっております。
SONY のシネマカメラの名機「F35」です。
F35 は2007年〜2008年ごろにかけてリリースされた映画業界向けのピュアなシネマカメラで、数多くの作品がこのF35で撮られたと聞きます。
このカメラに搭載されていた「ハイパーガンマ HG」というガンマが、昨今のカメラのピクチャープロファイルのガンマの基礎になっていると考えてよいかと思います。よく考えれば、すごいことですね〜。
F35 の公式書類から転載いたしました。こちらは、F35に搭載されているガンマカーブの種類で、No.4 に「HG4609G33」がありますね。α7RⅢでいうところのCine1 とは、このF35のNo.4のカーブに似せたものですよ、という意味なんですね〜。
「Cine2」では、F35のNo.2 のカーブに相当するよ、ということで、ホワイトリミットの扱いの違いということが言えるかと思います。
ちなみに、F35以後にリリースされているシネマカメラでも上記のHGという機能が継承されており、F55やF65というカメラでも同様のセッティングを持っていたりします。
では、このHGというガンマカーブを掘り下げてみます。
こちらも F35 の公式書類からの転載です。いわゆる「ITU-R709」という日本のテレビの信号を基準にその特性をベースにして、Knee(ニー)機能を使用せずに滑らかに高輝度部分を圧縮することで、広いダイナミックレンジを確保した特性をもたせたものと考えられます。
No.1〜No.4まではホワイトレベルが109%まで使えるものとなり、No.5〜No.8 が100%でクリップされる、というのが読み取れます。そして、その中のNo2 およびNo4 が採用されているということです。
つまり、現代のピクチャープロファイルのCineカーブは基本的に109%までのホワイトレベルで考えられたカーブになっている、ということが言えます。
よって、この「Cine1 〜Cine4」までのカーブは、SONYが持つF35時代からの色の考え方そのものが色濃く反映されたカーブだということで、SONYのシネマトーンが好きな人にとってはなんともありがたいカーブだと言えるかと思います。
さあ、ちょっとピクチャープロファイルってものが何なのか、というのがなんとなくピン!と来だしたのではないでしょうか!!!
こう考えると、ピクチャープロファイルを使いこなせれば、往年のF35カラーを模した撮影ができてしまうってことで、ちょっと気分もアガってきましたでしょうかw
さて、ピクチャープロファイルでは、ガンマカーブに加えて、kneeポイントの調整や、カラーガモット、というものも調整できるようになっています。次回はこのあたりを掘り下げていきたいと思います。
●Rec.709 とは 補足です。
Rec.709 という言葉ですが、ハイビジョンTV を活用するために策定されたものです。
色特性を統一規格として色管理業務を効率化したり、HDモニターの製造時(映像編集時によく利用されるマスターモニタ)の色基準となったりしております。
制作モニターをRec.709を基準にキャリブレートすると、マスモニとほぼ同じ色で作業できるということで、撮影・編集などのワークフローで、ほぼ同じ色を見ながら作業ができる、というわけです。
2018/3/25 追記
α7RⅢをベースに書いてますが、この内容、3/20に発売されたベーシックモデルの α7Ⅲ でも参考になるかと思います。